インドの話 2_7

 

カルカッタハウラー駅に着いたのは翌日13:45。他のインド人乗客達は到着予定時刻の30分も前から待ちきれずに立ち上がって、降車スタンバイ状態だ。釣られて私もスタンバイしたが、くたびれてもう1回寝ようと思った矢先、やっと到着した。

 

 

 

とりあえずチャイ飲みたいと立ち寄った駅のカフェで、今からプリーに行くという日本人男性と出会った。彼は昨日インド人にチケット代を騙し取られたというかわいそうな人で、おかげでカルカッタが嫌いになったという。いきなり被害者と遭遇するなんてよっぽど騙される旅人の割合が高いのかもしれない。「本気で気をつけんとあかん!誰にも気を許すな!ここでは触れ合いを求めるな!」私は再び気を引き締めた。

 

 

 

バックパッカーが集う有名な安宿街サダルストリート、初日は安寧を優先してドミトリーは避ける。夜はチャイナレストランに直行。カルカッタは中華料理がお手頃価格で食べられるので楽しみにしていたのだ。ラーメンを注文して待っていると、気が付けばテーブルは日本人旅行者4人の相席に。ん?何かが偏っている気が、おかしい。

 

 

 

男1 私 B型 個人旅行

男2   O型 個人旅行

女1   B型 個人旅行 元自衛官

女2   B型 個人旅行 

 

 

 

今朝、サダルストリート入口でインド人青年に声をかけられた。彼は友達のようにフレンドリーに「何してるの?」と問いかける。「ある中華料理店を探している」と答えると「教えてやるよ」と言うのだ。このとても親切な彼はムンバイ出身で今はカルカッタを観光旅行中らしい。店も見つかり「チャイでも飲まないか?」と誘われたので、13時に再会を約束した。別れた後、会うべきかどうか要点を整理して考えた。

 

 

 

1.サダルストリートで、客引きとしてでなく友人として声をかけてきた者はいない

2.ムンバイからきている彼が、カルカッタの中華料理屋「アショカ」を知っている

3.旅行中の彼が、サダルで偶然私に声をかけ、13時にまた再会なんて、意味不明

4.カルカッタよりもっと観光にふさわしい街があって、そういう所で出会うはずだ

5.旅行代は裕福な親が支払ったという自称スチューデント、経験上これは胡散臭い

 

 

 

以上の要点を考慮すると「彼は非常に怪しい人物だ。どういう手口で詐欺を仕掛けてくるかがちょっぴり気になるが、まぁ行かないでおこうかな」という結論に達した。

 

 

 

もちろん「気を許すな。ここでは触れ合いはいらん!」という意識と、チケット詐欺被害にあった男性の警告のおかげである。それでも約束をすっぽかすのは心苦しい。

 

 

 

それで、午後に訪れたカーリー寺院への道中は、彼に見つからないように待ち合わせだったはずの場所を避けて行き来した。往路復路、彼に見つかる事は無かったかわりに、復路で見知らぬ小汚い青年2人から声をかけられた。どう見ても地元の人間だ。

 

 

 

汚「ヘイ、君は13時に待ち合わせしていた日本人だね?」

私「!?(動揺)…いやあのその、大事な用事ができて…」

汚「たしか、君は〇〇〇〇ホテルに泊まっているんだね?」

私「Why do you know?(かつてない早口で)」

 

 

 

彼らは私が泊まっているホテルを知っていた。「ハリーポッターに似た日本人だ!」約束が反故にされた時点で、詐欺グループでターゲット情報が共有されたのだろう。

 

 

 

歩いていると昨日と同じ場所でまた昨日とは別のインド人学生からフレンドリーなお声がけ。やはり狙われてる。今日の私はとても冴えていたので、声をかけられる前から、奴が背後に迫って来ているのが見えていた。ちょうど「大縄跳び」で飛び込むタイミングを測っているかのように、私の懐にうまく飛び込んで来たそうにしていた。

 

 

 

昼食は中華料理店「香港」へ。42歳の店主のおっさんは「嫁はいらんよ、料理が好きや!」というほどだが、残念ながらあんまり流行っていないようだ。店舗改装してしまったが為に、休業中に「地球の歩き方」から除外されちゃってそのままなのだ。

 

 

 

次はいよいよネパール、そこで私の妹と合流する予定だ。夕方シアルダー駅に向けて出発。徒歩45分で駅に着いた。こんなに歩けるのもキャスター付きのバッグのおかげだ。以前から、私はあのバッグパッカーのどう見たって重たそうなスタイルは無理だと思っていたので、前回も今回もキャスターバッグだ。今の所、インドでゴロゴロとキャスターバッグを引きずって旅している低予算旅行者は私以外に見た事が無い。

 

 

 

21:15発の夜行列車に乗る。行く先は終着駅ニュージャルパイグリ(NJP)。

 

 

 

夜行列車はひたすら北上を続けている。「うぅ……さ、さ、さむい?」目が覚めると気のせいか寒い気がする。いや北上とはいえ、ここはまだインドだぞ、気のせいだ。

 

 

 

乗り継いだバスはダージリンへ登頂中だ。「窓を開けないでくれぇぇッ!」もう気のせいではなく寒い。5時間後、ダージリン到着。寒すぎて、やばい所来た…と後悔。

 

 

 

言い忘れてたけどそもそも紅茶好きじゃなかった。レモンティは大嫌いでもミルクティは好み、紅茶よりもコーヒーを好む私が、こうして「今」ダージリンにはるばるやって来ている。人生って分からないものだな。そういえば先月にはセイロン(笑)。

 

 

 

バス停の近くで宿泊(散策意欲無し)。水道は故障中で水が出ないがOK(入浴意欲無し)。標高2000メートル、どんなほかほか羽毛ふとんでお休みさせて頂いたかは記憶にございませんが、そもそもダージリン自体あまり記憶に無くて多分滞在がつらすぎたのだろう。こんな寒い所あかん!こんなのホリデーじゃない!もう明日にでも降りたるぞ!私はネパール行くついでにちょこっと立ち寄ってみただけなんだ!!

 

 

 

世界遺産「トイトレイン」はダージリン~シリグリ間を結ぶ路線を走るとっても長閑な路面電車だ。私はダージリンから中間駅カルシャンまでのチケットを買った。およそ3時間の旅。何の約束も予定も無い私は、トイトレインの旅を必要十分楽しんだ。

 

 

 

ちょうど昼時、カルシャンで下車。私を降ろしたトイトレインは、ゆっくりゆっくり進んで前方視界から消えていった。疲れきった西洋人女性を乗せて(笑)。彼女は、きっとこれから6時間かけて終点シリグリまで行くのだろう。そんな風景を想像しながら見送ったその数十分後、トイトレインは私の乗ったバスに追い越され、ゆっくりゆっくり後退して後方視界から消えていった。疲れきった西洋人女性を乗せて……。

 

 

 

 

ダージリン~カルシャン~シリグリ~ラーニーガンジと移動してきた。ここは国境の街。ここで1泊しようと思っていたら、なんとこの街にはホテルが無かった。もうすぐ夕暮れ、越えて行くしかない、国境を!!(イミグレ越えは初めての経験で興奮)

 

 

 

夕焼けと夕陽に向かってネパールへ向かう。夕方の国境越えは「西へ…」感ありありで美しい記憶となった(地図上だけでなく風景も)。そしてイミグレ間に横たわる川はなんと美しい清流であった。「こんなきれいな川インドで見た事ないぞ…(普通の川すらねぇよ!)。ここはもうインドではない…」と一瞬で国差ボケが解消された。

 

 

 

またも風邪をひいてしまった。やはり昨日の無理な移動が祟ったようだ。最後の予定外の国境越え(ラーニーガンジ~カカルビッタ)がきつかったか。ちゃんと「俺は今無理をしている、こういう時に風邪ひくんだから気つけよう」と自覚していたのに。

 

 

 

本日の移動はカカルビッタからジャナクプルへ7時間のバスの旅。両替所で出会ったNGOの日本のおじさんが言っていたとおり、ハイウェイはよく整備されていてバスの乗り心地は悪くない。このハイウェイがあの有名なODAの賜物の1つだ。聞いてばっかりだったODA、今日が初体験だわ。世界ワースト3というネパールの貧しさは、昼間の人々の生活(服装・持物など)を見る限りあまりピンとこなかったが、ハイウェイに夜が訪れると、対向車・道路照明灯の少なさという形で浮かび上がった。

 

 

 

 

風邪のため一日休養。部屋とホテル1階の食堂の往復のみで外に出る気にもならず。

 

 

 

2002_06                              2002_08