インドの話 2_12

 

今日はネパール暦新年。正月早々「サランコット」登山を決行した(往復6時間)。

 

 

 

サランコットからの帰り、犬を連れたスイス人女性と話しながら下山。久しぶりに心ときめくシチュエーションだ。ただ、私の必死な英語での話しかけに「OK!」の相槌ばかり打つのはやめて欲しい、不安になるぞ。と思いきや「日本人なのに珍しく英語がしゃべれるのね!」と言ってくれた彼女。その理由を説明した後、私の次の一言

 

 

 

That’s why  can speak English、A little.

 

 

 

最後に「Little」を付け足してしまうとっても奥ゆかしい私。しかしまぁおかげさまで昨年のフレンチヴェジタリアンの件、ようやく少しは溜飲が下がったかな?

 

 

 

妙法寺・サランコットと2日続けて歩きまくって筋肉痛になったので、今日は休養。

 

 

 

チベタンのおばちゃんと買付交渉。前回交渉時、彼女には見積もりだと言ってあるのに、既に量産体制が絶賛稼働中だった。それもリクエストした仕様と微妙に異なる商品を20個も。これはちょっと売れないだろうな…。だが私はクレームを言う事も無く購入するつもりだ。何故ならば、彼女の悲しい生い立ちを聞いてしまったからだ。

 

 

 

「マウントフジモモ」で、クニさん(30)・ミキさん(25)の日本人カップルに出会った。トレッキング情報を集めている最中の私だが、漫画を読んでいる彼らからそういうストイックなムードは全く漂ってこなかったので、気が合うかもしれない。

 

 

 

明日からいよいよ、このぬるま湯(笑)のポカラを離れて、山奥&辺境へ入る。ポカラもいいがアンナプルナ(トレッキング)はもっともっと素晴らしい!と聞く。私はこれまでに2人の日本人から同じような後悔の呟きを聞いた。「ポカラでぼけーっとしていないで、もっと早くにトレッキングに出ればよかった……」とはいえ「ポカラ以上に素晴らしい所がある」というのはポカラにいると分からんほどポカラは良い。

 

 

 

だが選択肢は「ポカラorトレッキング?」だけではない。私はトレッキングに挑まない明確な理由がある。「寒いのは嫌だ!」からだ。幸い、寒くなくてかつ魅力的なスポットを発見した。それは「地球の歩き方」コラムで小さく紹介されていた「シンハ温泉」だ。スーパー僻地ではあるが高地ではない(から寒くない)。そこを目指そう。道中、お手軽トレッキング希望者にはぴったりのダンプスにも立ち寄れる。ここに登れば気分も味わえてなお良かろうて。辺境ツアー、何だかわくわくしてきたぞ。

 

 

 

ポカラからベニまではバスで。95ルピー、結構高い。快適じゃないのに、運賃が高いって事は…、きっと目的地は遠いな。やがてバスは本線を外れて、舗装されていない支線に進入した。そこからはもう、むちゃくちゃ揺れまくる。私は今でもその絶望の瞬間「えっ、マジでこれ行くん?」をよく覚えている。バスがアスファルトから黄土色した未舗装道路に、横揺れしながら、の…っ…そり…と進入して行った瞬間を。

 

 

 

1時間なんとか耐えて、ベニに到着。バス停から吊橋を渡るとそこが中心街、しっとりとした落ち着いた雰囲気のいい街だ。ポカラに長くいすぎたせいか、見知らぬ土地で湧き上がる緊張が心地良い。英語表記も「ホテルドルフィン」以外見当たらない。

 

 

 

海誠の天気の子の日、新春の雪野融けた清流に沿って小路を散歩、それはまるで、まるで夢の景色のように美しい眺めだった。3時間後、湯気立ち昇る温泉に到着した。

 

 

 

こんなとこにもホテルがあった(無いと困るのだが)。スーパー僻地なので、ディスカウントしてもらったら、電気も来てないやないけ。まぁ、あんまり驚かないけど。

 

 

 

目当ての温泉は川沿いにあった。ネパールでは着衣のままの入浴がルールだ。性格に関しては日本よりアジアのほうが開放的だと思うけど、風呂(着衣)や防犯(施錠・鉄格子)に関してはアジアより日本のほうが開放的な感じだ。それはともかく、水着をわざわざ日本から持ってきている私にスキは無い!その前にお昼を食べてからと。

 

 

 

 

奥さんにダルバートを作ってもらう。床置きのカセットコンロで、米を炊き、芋を茹でて、豆スープを作る。実際作っている所は初めて見た、わずか1人の昼食に大変な手間だ…。誰かに食べるモノを作るという営みの貴さに気付かされ、打ち拉がれた。

 

 

 

幸せなランチタイムに誰かがやってきた。「あっ、君の名は!」なんとポカラで出会ったクニさん・ミキさんだった。「彼らはKTMに行ったはずなのに?」「うどん君(=私)は今日はダンプスにいるはずなのに?」お互いいろんな予定が入れ替わってこんなS僻地で再会。でも、ポカラで別れた後「なんかまた会いそうだなぁ」という予感はしていた。話し込んでいると、いつの間にか温泉の営業時間は終了していた。

 

 

 

クニさんらに旅の情報の他、いろいろ教えてもらう。「硫黄を含む温泉はシルバーアクセサリーを変色させる」たちまち役に立つ情報だ。私は南インドからずっとタイガーアイの石をぶらさげてエナジーを貯めていたので、危うく変色させる所であった。

 

 

 

朝5時40分起床。まだ眠そうなクニさんを起こして(頼まれていた)温泉。この温泉は日本に持ってきても最上級な感じがするぞ。電気も来てない集落だから当然源泉かけ流しだろう(笑)。しかも川沿い。朝は気温が低めなのでなおさら気持ちいい。クニさんは1時間あまりであがったが、私は(男女交代の時間まで)2時間粘った。

 

 

 

1年半前、クニさんとミキさんはKTMで出会った。それ以降ほとんどの時間を2人で過ごしている。驚くべき事に、彼らは日本国内でお互い会った事が無い。それなのに結婚後の生活について色々話し合っている。「この旅の間、ずっと2人で一緒に過ごしている。この先結婚したとしてこんな時間を持てるだろうか?」彼らは、この旅する日々を重ねていく事に、これ以上無いほど崇高な意味を見つけてしまったのだ。

 

 

 

朝風呂2時間。ここはASKAⅡの大浴場と並ぶ3大絶景風呂の1つとなった。クニさんらとは、ベニでお別れ。彼らは冷えたビールを求めて、休む暇なくポカラへと収束していった。この時ベニは停電中で、冷蔵庫が止まっていたのだ。「ビールの為にポカラまで行くんだ、そこまでして飲みたいんだ」と好きな物の為なら頑張れると実感。「ビール・ポカラ」を「うどん・香川」に置き換えれば自分も同じか。恐るべき讃岐うどんに興味を持ってくれた彼らはいい人達だった。香川での再会を約束した。

 

 

 

ベニで休憩(ミルクティー&ホットレモン🍋)した後、歩いてポカラ方面へ。あのジャリ道をまたバスに閉じ込められて揺らされ続けるのはトラウマ級に嫌だった。「それぐらいなら3時間歩くわ!」ぐらいに嫌だったのだ。揺られずに歩けるだけで、まるでこのジャリ道が「初恋のきた道」に匹敵する素晴らしい想い出の道となるのだ。

 

 

 

こんな長い間、何を考えながら歩いていたんだろうか、もう忘れてしまった。両サイドから挟み込むように高くそびえる岸壁が壮観だった。そのそびえる岸壁に道路がジグザグに走っていて時々バスが登って行く。「よくあんな所に道造ったもんだなぁ」って他人事に思っていたら、次の私の目的地「バグルン」はその岸壁の向こう側だった。3時間歩いて漸くジャリ道が途切れた。もうこれ以上歩く必要は無い。6時半、バスでバグルン着。辺境に行くほど強いマオイスト勢力、7時半に早めの戒厳令だ。

 

 

 

辺境ツアーも佳境、私はポカラ行きのバスに乗っていた。ダンプスへのトレッキング起点となる「フェディ」で途中下車したい。着いたら車掌が教えてくれる段取りだ。

 

 

 

ところが、バスはどんどん走り、どう見てもかなり平地まで下ってきたような感じでも、車掌さんは何も声かけてこない。なんなら「もうすぐポカラに到着してしまうんじゃないか?」というような車窓からの雰囲気。「車掌さん、ひょっとして言うの忘れてる?」他人を信頼できなくても何ら不思議ではない国々を旅してきた私だ、腹立たしくも何とも無い。「ま、いいか(諦めっ)。ポカラに着いたら漫画喫茶行こ…」

 

 

 

掌「もうすぐフェディだよ」

 

 

 

その刹那「まずい!」ざわざわと効果音が走った。「ありすぎる…!高低差…!」ダンプスは標高1800メートル、これだと日中でもかなり涼しいはずだ。しかし、ここフェディ、理外の長袖要らず!標高はかなり低いはずだ。「ここから登れって?」

 

 

 

もう1つの高低差「トレッキング&漫画喫茶」も厳しい。本来なら高低差どころか動く歩道、トレッキングするつもりでトレッキングするはずだった。ゴール直前、油断が招いたギャップを超えられるか?…頑張りました(75分)。トレッカーにとっては入口に過ぎないダンプスでも、私にとっては絶頂点「頑張ってここまで来て良かったー!!」マチャプチャレを含むアンナプルナ連峰がより近くに見えるというのは本当だった。「ほぇー、これは確かにポカラでぼけーっとしている場合じゃないな!」

 

 

 

3軒あるうちの1軒にチェックイン。とても汗をかいていたので、早速シャワーを浴びる。浴室から出て、上半身裸でしばし山をみつめていたら、奥さんに尋ねられた。「You don’t have another shirt? 」「持ってないよ」奥さんの呆れた表情はとても良かった。ショールを貸してくれたので、ぐるぐる巻睡眠。

 

 

 

 

2002_11                              2002_13